膝の伸展制限があるサッカー選手を担当したので、その選手の伸展制限を改善した方法をご紹介します。
選手紹介
その選手は10年前くらいに膝前十字靭帯を断裂し、再建術の手術をしています。
半月板損傷の除去手術を何度か受けています。
遊離体の除去手術を受けています。
骨の変形があり、30代ですが、変形性膝関節症の画像所見があります。
評価
うつ伏せで寝た状態でベッドから下腿を出して、左右の踵の高さを比べるHHD(Heel Height difference)は6横指程度。
屈曲は120°程度でそれ以上は中が詰まっていかない程度。
運動後は熱感が出ることがあります。
治療ー3つのポイントー
この選手の伸展制限を改善するには、
・膝後面の軟部組織の硬さ
・ホームスクリュームーブメント
・関節裂隙のスカーティッシュ
この3つのポイントをそれぞれケアしていきます。
膝後面の軟部組織の硬さ
当たり前ですが、膝を伸展していくと、後ろの軟部組織が硬いと伸展が制限されます。
後ろにある軟部組織と言えば、代表的なものとして、ハムストリングス、腓腹筋、膝窩筋があります。
ハムストリングスや腓腹筋は二関節筋と言って、ハムストリングスは股関節と膝関節の後ろで2つの関節を跨ぎます。
腓腹筋は膝と足関節の後ろで2つの関節を跨ぎます。
これらの筋肉は長い筋肉なので、硬くなりやすく、短縮もしやすいので、要チェックです!
膝窩筋は単関節筋ですが、膝が腫れたり、関節の中の動き(滑りや転がり)がうまくいかなかったりすると、硬くなりやすい筋肉です。
この選手は特に腓腹筋の内側頭が短縮してタイトネスを呈していたので、ダイレクトに圧迫してストレッチしていきます。
また、膝伸展位で足関節を背屈させて腓腹筋をストレッチさせた状態で、プラス腓腹筋のテンションが高い部位を圧迫してストレッチ+ダイレクトストレッチも効果的です。
これをやっただけでも、膝伸展が行きやすくなりました。
ホームスクリュームーブメント
ホームスクリュームーブメントとは、膝伸展最終域で下腿がわずかに外旋することを言います。脛骨と大腿骨の形状がこの動きを誘導することになります。
膝後面の軟部組織の硬さをリリースした後は、この伸展最終域での下腿外旋を出すようにモビライゼーションを行います。
他動的に伸展と同時に下腿外旋方向へ誘導します。
この時に同時に先ほどのダイレクトストレッチを行うのも効果的です。特に膝の内側の後ろを圧迫しながら外旋方向へ誘導します。
その前提として、下腿の前方方向への滑りを出しておきます。
この2つのポイントをアプローチしておくとある程度伸展制限は改善します。
関節裂隙のスカーティッシュ
最終的に骨の変形もあるので、関節裂隙の狭小化があるので、大腿骨と脛骨がぶつかるところがあります。
動きの中でぶつかったりを繰り返し、微小な炎症の繰り返しで、スカーティッシュ(瘢痕組織)が溜まっていることがよくあります。
ゆっくり圧迫しながら、熱と圧で剥がすイメージでアプローチしてあげるとスカーティッシュが剥がれたり、圧迫で薄くなることで、ぶつかりにくくなり、伸展がより行きやすくなります。
スカーティッシュがあると、結構劇的に伸展が出るようになります。
やられている選手本人が一番実感するので、伸展したときの選手のリアクションを見れば、伸展可動域が改善しているかどうかは明らかです。
再評価
再び、選手にうつ伏せになってもらって、HHDを見てみましょう。
最近、ケアしたときは6横指→3横指弱まで改善しました。
本人の満足度は高かったです。
まとめ
この選手は変形もあるので、完全に伸展制限がなくなるまではいきませんが、なるべく可動域制限を小さくすることで、動きの幅を確保するとともに、膝にかかるストレスを少しでも軽減してあげることが大事です。
現役選手の中では伸展制限は強い方です。
できるだけ、膝の機能を維持しつつ、練習前後でいい状態にしてあげるように日々のケアを継続して、選手生命を長くしてあげたいところです。
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